名古屋地方裁判所 平成10年(行ウ)40号 判決
原告 青木保守
原告 小川時枝
原告 太田吉彦
原告 小出修作
原告 石塚桂市
原告 水谷清明
原告 祖父江美智枝
原告 神戸邦子
原告 加賀正勝
原告 岩田光枝
原告ら訴訟代理人弁護士 前田義博
同 原山剛三
被告 武田晋
被告 小林匠
右二名訴訟代理人弁護士 大場民男
同 鈴木匡
同 鈴木雅雄
同 深井靖博
同 堀口久
被告 花木和彦
被告 浅野富典
被告 前田繁一
被告 柴田定男
右四名訴訟代理人弁護士 加藤昌秀
訴訟参加人 清洲町長 大長芳雄
右訴訟代理人弁護士 青木茂雄
被告 六合建設株式会社
右代表者代表取締役 奥田泉
右訴訟代理人弁護士 奥村哲司
被告 中部松下システム株式会社
右代表者代表取締役 岡本博幸
右訴訟代理人弁護士 高須宏夫
同 水野聡
主文
一 本件訴えは、温水プール利用回数券に関して被告武田晋に対し損害賠償を求める部分を除き、いずれもこれを却下する。
二 被告武田晋は、愛知県西春日井郡清洲町に対し、金二二万五六〇〇円及びこれに対する平成一〇年八月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らの被告武田晋に対するその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用中、原告らに生じた費用を一〇分し、その一を被告武田晋の負担、その余を原告らの負担とし、被告武田晋に生じた費用を五分し、その四を原告らの負担、その余を被告武田晋の負担とし、その余の被告らに生じた費用を原告らの負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告武田晋(以下「被告武田」という。)、被告小林匠(以下「被告小林」という。)、被告花木和彦(以下「被告花木」という。)、被告浅野富典(以下「被告浅野」という。)、被告柴田定男(以下「被告柴田」という。)及び被告六合建設株式会社(以下「被告六合建設」という。)は愛知県西春日井郡清洲町(以下「清洲町」という。)に対して、連帯して、金二四七万八一八〇円及びこれに対する平成一〇年八月八日(訴状送達の日の翌日)から、支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告武田及び被告浅野は清洲町に対して、連帯して、金一〇八万三二〇〇円及びこれに対する平成一〇年八月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告武田、被告小林、被告花木、被告浅野、被告前田繁一(以下「被告前田」という。)及び被告中部松下システム株式会社(以下「被告中部松下」という。)は清洲町に対して、連帯して、金二三〇万七二〇〇円及びこれに対する平成七年五月三〇日(不法行為の日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 当事者間に争いのない事実等(証拠により容易に認定した事実については、適宜掲示する。)
1 当事者
(一) 原告らはいずれも愛知県西春日井郡清洲町の住民である。
(二)(1) 被告武田は、平成九年五月三日まで清洲町長であった者、
(2) 被告小林は、元株式会社大建設計の従業員で、昭和六三年三月一日、清洲町嘱託員に採用され、総務部管財課勤務を命じられていた者、
(3) 被告花木は、清洲町の助役、
(4) 被告浅野は、清洲町の総務部長であった者、
(5) 被告柴田及び被告前田は、いずれも清洲町の管財課長であった者、
(6) 被告六合建設は、観光啓発アーチ設置工事及び追加工事を請け負った者、
(7) 被告中部松下は、清洲町に映写機を販売した者である。
2 公金の支出及び財産の管理
(一) 観光啓発アーチ設置追加工事関係
清洲町は、被告六合建設との間で、平成九年一月二九日、清洲町大字清洲地内、町道西田中清洲線に、清洲町勤労福祉会館(以下「アルコ清洲」という。)の宣伝のための観光啓発アーチを設置する工事(以下「本件アーチ設置工事」又は「本工事」という。)の請負契約(契約金額一一三三万円)を締結した(甲四の一)。
清洲町は被告六合建設との間で、同年二月一八日、既設水道管の布設替工事等を内容とする本件アーチ設置追加工事請負契約(契約金額二四七万八一八〇円。以下右工事を「追加工事」といい、その契約を「本件アーチ設置追加工事契約」という。)を随意契約により締結した(甲八の一と二)。
同年四月三日付けの支出命令に基づき、同月一〇日ころ、右本工事及び追加工事による右請負代金一一三三万円及び二四七万八一八〇円が支払われた(甲一九、二〇の各一と二)。
なお、本件アーチ設置追加工事についての支出負担行為、支出命令は、被告武田が行った。
(二) 温水プール回数券関係
清洲町は、平成七年三月、アルコ清洲温水プール利用回数券(以下「回数券」という。)四万枚を作成した(甲一〇の一と二、乙ロ一)。その内訳は、大人一五回券と小人一五回券が各一万枚、一〇回券が一万五〇〇〇枚、五回券が五〇〇〇枚であった。
右一〇回券一万五〇〇〇枚のうち一万〇五五三枚が販売されたところ、三七七〇枚しか残っていない。差引き六七七枚分の管理及び処分の違法性が本件の争点である。
(三) 映写機関係
清洲町は、被告中部松下から、平成七年二月一〇日、一六ミリ映写機(七六〇クセノンと三五〇クセノンの二機種)を含むアルコ清洲の「マイク他備品」を五四六万一〇六〇円で購入する契約を締結し、同年五月一一日に右代金を支払った(甲一一の一と二、二一の一と二)。
清洲町は、被告中部松下から、同年三月三日、一六ミリ映写機を二三〇万七二〇〇円で購入する等の「物品購入契約」(以下「本件映写機追加契約」という。)を締結し、同年五月三〇日に右代金を支払った(甲一二の一と二、二二の一と二)。なお、右支出命令に係る支出金調書(甲一二の一)においては、予算科目として、五款一項二目一五節細節「工事請負費」として決裁されている(以下右支出を「本件映写機取付工事に関する支出」ともいう。)。
右支出負担行為と支出命令は、被告花木が専決権者として行った。
3 住民監査請求
(一) 原告らは、平成一〇年六月一〇日、本件アーチ設置追加工事に関する支出及び回数券の管理について、清洲町監査委員に対し監査請求を行った。
同監査委員は、同年七月二日付けでこれをいずれも却下し、同月三日原告らに通知した(甲一三と一四の各一ないし三)。
(二) 原告らは、平成一〇年七月六日、本件映写機取付工事に関する支出について清洲町監査委員に対し、監査請求した。同監査委員は、同月三〇日付けで却下し、同月三一日、原告らに通知した(甲一五の一と二)。
三 請求の概要
1 本件アーチ設置追加工事関係(請求一)
本件アーチ設置追加工事は実体がないから、無効であり、これに基づく支出が違法であるとして、(一)支出負担行為と支出命令をなした被告武田に対しては、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号前段(以下「四号前段」という。)の「当該職員」としての損害賠償、(二)被告小林、被告花木、被告浅野及び被告柴田に対しては、法二四二条の二第一項四号後段(以下「四号後段」という。)の「怠る事実に係る相手方」としての損害賠償、(三)被告六合建設に対しては、四号後段の違法な支出の「相手方」に対する損害賠償又は不当利得返還請求として、連帯して、右契約代金相当額二四七万八一八〇円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるものである。
なお、原告らは、訴え提起当時は、被告小林、被告花木、被告浅野及び被告柴田に対して、四号前段の当該職員としての責任を求めていたが、平成一一年三月一日付け準備書面で右のとおりの訴えに変更した。
2 回数券関係(請求二)
回数券のうち一〇回券六七七枚を、紛失させたこと、一部を無償で譲渡したことが、違法な財産の管理であるとして、被告武田及び被告浅野に対して、四号前段の「当該職員」としての損害賠償として、連帯して、六七七枚の販売代金相当額一〇八万三二〇〇円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるものである。
3 映写機関係(請求三)
本件映写機追加契約が無効であり、本件映写機取付工事に関する支出が違法であるとして、(一)支出負担行為と支出命令について、本来的権限者である被告武田及び専決権者である被告花木に対しては、四号前段の「当該職員」としての損害賠償、(二)被告小林、被告浅野及び被告前田に対しては、同号後段の「怠る事実に係る相手方」としての損害賠償、(三)被告中部松下に対しては、同号後段の違法な支出の「相手方」に対する損害賠償又は不当利得返還請求として、連帯して、右契約代金相当額二三〇万七二〇〇円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるものである。
なお、原告らは、訴え提起当時は、被告小林、被告浅野及び被告前田に対して、四号前段の当該職員としての責任を求めていたが、平成一一年三月一日付け準備書面で右のとおりの訴えに変更した。
四 争点及び争点に対する当事者の主張
1 監査請求の適法性(監査請求期間)
(被告らの主張)
(一) 法二四二条二項は、住民監査請求は「当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」と定めているところ、本件アーチ設置追加工事に関する支出と本件映写機追加契約に関する支出に関しては、いずれも行為のあった日から一年を経過しており、正当な理由もない。よって、適法な監査請求手続を経由していないので、不適法である。
(二) 正当な理由がないことについて
(1) 本件アーチ設置追加工事関係
以下の事情から住民は本件アーチ設置追加工事契約の締結及び内容等につき知ることができたし、清洲町においてこれを秘匿した事実もない。
<1> 本工事について、平成八年度当初予算において議会審議がされ、平成八年四月の清洲町の広報(甲一七)にも記載がある。「清洲町指名競争入札結果の公表に関する取扱規程」により、本工事請負契約についての入札結果を公表していることから、本工事の契約の締結及びその金額は、住民である原告らは知り得た。
<2> 平成九年九月、本件アーチ設置工事全体について、平成八年度決算書が議会に提出されており(丙九の一と二)、右決算書と右本工事の契約金額とを照らし合わせれば、その差額が右追加工事代金額であり、相当な注意力をもってすれば、追加工事の存在及び金額等を知ることが可能である。
<3> したがって、住民である原告らは、本件アーチ設置工事全体についての平成八年度決算書が清洲町議会へ提出された平成九年九月には、右追加工事の存在及びその代金額を知り得たものである。
<4> 右本工事契約及び追加工事契約は、いずれも愛知県の県費補助金事業に基づくものであり、その資料が清洲町より愛知県に提出されている。愛知県においては、すでに情報公開条例が昭和六一年一〇月に施行されており、原告らは、県に右各工事の情報公開を求めれば、右追加工事の具体的内容を知ることができたのである。
したがって、原告らは、右平成九年九月の決算書の提出後相当期間内に監査請求をすべきであったのに、九か月を経て監査請求をしており、原告らの期間徒過に「正当な理由」はない。
(2) 映写機関係
アルコ清洲の備品である映写機等の購入、設置についても、何ら住民に対し秘密裡に行われたものではなく、平成六年三月、清洲町議会に右予算が提出され、審議の結果可決承認されており、住民らの知るところであった。
さらに、清洲町が住民に配布している「広報きよす」平成七年三月号には、「同年四月のアルコ清洲のオープンに先立ち同年三月二六、二七日の両日に施設の一般公開をする」旨の記事が掲載されており、住民らに対し、右施設内容を公開することが周知されている。住民は、右両日にアルコ清洲に出向き、施設見学をすることにより施設の備品を確認することができた。
したがって、原告らは、遅くとも平成七年三月二七日には、本件備品の状況を知ることが十分可能であったのであり、その後、原告らの監査請求は三年四月を経過してなされたのであって、「正当な理由」は認められない。
また、映写機購入の事実及びその台数については、平成八年度一般会計歳入歳出決算書(丙九の二)の「財産に関する調書」の「アルコ清洲」の欄に映写機三台を購入したことが明記されている。
(3) 原告らは、清洲町の情報公開によって初めて映写機の問題を知り得たと主張するが、仮にその主張を前提にしても、清洲町の情報公開条例は、平成一〇年四月一日に施行されているところ、原告らの住民監査請求は、同年七月六日にされており、条例に基づいて情報を知り得る状況になってから三か月余を経てからなされたものであって、相当の期間を経過しているから、「正当な理由」がない。
(4) 「正当な理由」があるといえるのは、当該行為が住民に隠れて「秘密裡にされ」た場合に限定されるが、前記のとおり、当該各行為は、予算、決算書にも計上されるなど、何ら秘密裡になされたものではない。
(原告らの主張)
(一) 最高裁判所第二小法廷昭和六三年四月二二日判決は、法二四二条二項に関し、「当該行為が秘密裡にされ、一年を経過してからはじめて明らかになった場合等」には、「同項ただし書にいう『正当な理由』の有無は、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が、相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべき」であるとした。
(二) 右最高裁判決が「・・場合等」としているのは、秘密裡にされたのと同様に客観的に知り得ず、知ることが困難であった場合も含む趣旨である。
「当該行為を知ることができたと解される時」とは、当該行為の存在のみならず、当該行為が違法、不当であることを基礎付ける事実を知り得た時である。
(三) 本件アーチの設置自体は秘密裡になされたものではないが、被告らは、本件アーチ設置工事に関する支出を、本工事契約と随意契約が可能な「追加工事」契約に分け、追加工事契約の存在自体を隠した。そして、本件アーチ設置工事に関する支出が違法、不当であることを基礎付ける事実(<1>必要のない既設水道管布設替工事、<2>虚偽の看板躯体骨組変更、<3>虚偽の建方作業、<4>タイマー変更)は、予算、決算の議会審議にも、町会報にも現れず(本件アーチ設置の予算は公表されたが、本工事契約の内容、入札結果や契約金額は公表されなかったし、追加工事は、内容のみならず契約締結自体公表されていなかった。)、客観的に知り得なかった。右事実は、本工事や「追加工事」の内容を予算書及びその添付書面、工事請負契約書並びに内訳書その他の添付書面等を対比して検討しなければ知り得なかった。このように、原告らは、本件財務会計行為の違法性を客観的に知ることが困難であった。
(四) 映写機購入も秘密裡になされたものではないが、被告らは購入した映写機が取付工事を要しない機種であるのに、作為的に備品購入費と取付工事費に分けて行われた。そして映写機購入に関する支出が違法、不当であることを基礎付ける事実(映写機の機種、台数、単価、取付工事の要否)は、予算、決算の議会審議にも、町広報にも現れておらず、どのような映写機を購入するのか、それが「取付工事」を要する機種か否かなど一切公表されておらず、客観的に知り得なかった。
清洲町は、従来、町議会議員に対しては「領収書及び諸憑書類」を公開していたが、被告武田は平成七年九月、右公開を一方的にやめていた。
(五) 原告らは、平成一〇年四月一日に施行された公文書公開条例により、同年五月七日公文書公開請求をしたところ、右公文書は平成一〇年五月二七日に金額等を一部抹消して公開された。これらに関する文書は、相当な量があり、また、検討に専門的知識を必要とする事項、担当職員から事情聴取をする事項(回数券)もあり、順次検討するだけで相当の日時を要した。
(六) 以上のとおり、原告らは、公文書公開請求を行い、平成一〇年五月二七日に右請求に基づき公開された多数の文書を順次検討し、さらに関係方面に必要な調査を行う中で、違法、不当の疑いを持ち、担当職員らから事情聴取したうえで、「相当の期間内」である同年六月一〇日と七月六日に監査請求をしたのであるから正当な理由がある。
2 被告適格、監査請求前置等など
(被告らの主張)
(一) 四号前段の「当該職員」とは、住民訴訟制度が法二四二条一項所定の違法な財務会計上の行為又は怠る事実を予防又は是正し、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものと解されることからすると、「当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者を広く意味し、その反面およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しない」(最判昭和六二年四月一〇日判例時報一二三四号三一頁)。
本件において被告らが「当該職員」とされるには、法令により支出負担行為及び支出命令に関する決裁権限を有する職員であるか、又はその職員から権限の委任を受けた職員であることが必要である。
(二) 回数券の管理に関する当該職員について
「プール利用回数券」は、法二三九条一項に定める「物品」に該当し、この「物品」の管理については、清洲町決裁規程に専決権限者を定める規程がない。そして、本件回数券の管理は「清洲町出納員等に関する規則」別表第一及び第二の規定の収入役及び出納員並びに分任出納員の権限に含まれないことから、その職務権限は町長にあった。したがって、総務部長であった被告浅野には、法令上権限はなく「当該職員」には該当しない。
(三) 四号後段に基づく請求について
原告らは、違法支出と主張されている行為に関係した担当職員すべてを四号後段の「相手方」として被告としているが、そのような解釈は、四号前段が「当該職員」に限定して損害賠償請求の代位を認めていることが、まったく無意味になってしまう。よって、四号後段にいう「相手方」とは職員以外の第三者と理解すべきであり、被告小林らについては、四号後段に基づく請求の被告とすることは許されない。
原告らは、請求を、四号前段によるものから、四号後段に基づくものに変更したが、これは訴えの変更にほかならず、右新請求に係る訴えについては、監査請求を経ていないし、所定の訴訟提起期間を徒過している。
(原告らの主張)
被告らは、原告らのように解すると、四号前段が「当該職員」に限定した趣旨が無意味になるなどと主張する。しかし、四号後段の「怠る事実に係る相手方」に対する請求は、本件の場合「当該職員」により違法、不当な公金の支出が行われたことを前提としながらも、これを補助した他の職員たる被告らに対し清洲町が損害賠償請求権を有し違法、不当にその行使を怠るという要件を加えて判断されるものであり、四号前段請求が無意味になるものではない。
3 違法性
(原告らの主張)
(一) 本件アーチ設置追加工事関係
(1) 追加工事予算書の1(既設水道管布設替)は、実体がない。
<1> 本件アーチ設置追加工事は、本工事着工後既設水道管が発見されたとして、本工事に含まれていなかった「既設水道管布設替」とその他の設計変更を理由として工事請負契約が締結されているが(甲七の二)、本工事の着工は平成九年三月一三日であるのに、追加工事の設計図はその一か月前の二月一〇日に作成され(甲七の三の一ないし三)、追加工事の支出負担行為決議書の作成(甲六)、追加工事契約の締結がされているなど、すべて本工事の着工前である(甲八の一)。
<2> 水道管の布設替の内容は、基礎を浅くし、曲がる材質のパイプにして、アーチの基礎を避けて通すというきわめて簡易な工法であり、土工事費等は設計変更前の内容でもかかるので、追加工事で計上する必要はない。
<3> 六合建設が行った工事以外に清洲町水道事務所が行った工事はないと考えられる。
(2) 追加工事予算書の2(看板工事)も、実体がない。
<1> 「錆防止の為鋼製をステンレスSUS三〇四に変更」、「躯体骨組鉄鋼をステンレスに変更六〇〇kg差額」とあるが、右ステンレスによる施工はなされていないし、行灯内部に隠れる躯体部分をわざわざ加工しにくいステンレスにすることはそもそも考えられない。
<2> 「外周鋼鈑をステンレス板に変更」とあるが、外周鋼鈑はもともとステンレスの設計であり、甲一の三の本工事設計図にすでにステンレスであることを示す「SUS加工」の文字がある。本工事の内訳書(甲四の二)にも「行灯加工押縁SUS加工」とある。
<3> 「建方看板取付二ヶ所深夜作業」とあるが、本工事の工事写真では建て方は三月一九日になっているので(甲五の写真)、建て方前の二月一〇日に行われた設計変更において、建て方作業費を本工事とは別に計上する必要はない(甲二八)。
(3) 追加工事予算書の3(電気工事)も、実体がない。
「ソーラータイマーを時間タイマーに変更」とあるが、ソーラータイマーにせよ時間タイマーにせよ、これらは分電盤の費用に含まれるのが普通であり、分電盤の費用と別項目にすること自体が不自然であり、そもそも時間タイマーの方がソーラータイマーより安い。また、その点をさしおいても、ソーラータイマーを時間タイマーに変更したのなら、使用しなくなったソーラータイマーの分を減額しなければならないはずなのに、それがない。
以上のとおり、本件追加工事契約はまったく実体のない無効な契約であり、その代金の支出は違法である。
(二) 回数券関係
(1) 回数券六七七枚については、処分先が不明であり、紛失したものというべきである。
(2) 回数券の管理事務を所管していた総務部長の被告浅野は、右回数券を、役場二階の会議室の刊行物等とともにカウンター内に保管していたというが、厳密に施錠され、管理されていたかきわめて疑わしい。回数券の使途も、丙一〇のような、綴じられていない単なるけい紙に手書きされた、記載者の署名も捺印もないような手控えによって管理していた。このように、持ち出した者の特定ができないようなもので管理すること自体不適切である。右手控えは、記載漏れも多数あった。
被告浅野は、自ら右回数券の管理をしておらず、特定の出納職員を設けるでもなく、多数の総務課職員に行わせており、年度末などの在庫確認も行われていなかった。
(3) 手控えに記載があるものについても、「総務課公用」と記載されているものは、どのような「公用」で誰に譲渡したのかも特定できず、その具体的な使途が不明である。
また、被告浅野作成の「使途明細」なる文書(乙ロ二)には、平成七年一二月から平成九年一二月に「新成人と語る会」参加者記念品として各一二枚を配布した旨の記載があるが、これらは「手控え」には記載されていないし、平成九年の参加者らは一〇回券などもらっていないと証言している(甲三〇、三二の一ないし三)。「新成人と語る会」の行事予算書は提出されていないし、一〇回券を配布するとの指示文書も作成、提出されていない。
(4) 手控えに使途の記載があるものについて、それが真実であるとしても、職員への配布など、「公益上の必要」があることになるのか不明である。「慰労」、「PR用」は「公益上の必要」とはいえない。
無料配布用としては五回券が作成されており、一〇回券については、「特別割引」で販売することについて「町長が特に認めた場合で法人・企業・団体等が相当数一括購入した場合に」との要件が付されている(丙一三の一)。一〇回券を無償で配布することは予定されていない。
(三) 映写機関係
清洲町が購入した一六ミリ映写機はいずれもポータブル式若しくはキャスター付きのものであり、本来取付工事費はかからないものであるし、「マイク他備品」購入費の中には相当額の「機器設置調整費」が含まれており、それとは別に取付工事費がかかることはおよそ考えられない(甲一一の一)。
(被告らの主張)
(一) 本件アーチ設置工事関係
争う。
(二) 回数券関係
大人用一〇回券六七七枚の使途は、別表記載のとおりであり、使途の不明瞭なものはなく、不正に使用したものも一切ない。
右回数券の使用は、すべて無償譲渡であるが、いずれも法二三七条二項及び「清洲町財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」六条一号の規定(丙一二)に従い、「公益上の必要に基づき、他の地方公共団体その他公共団体または私人に譲渡」したものである。
よって、「違法な管理」の事実は存在しない。
(三) 映写機関係
争う。
4 被告らに責任はあるか。損害額はどのくらいか。
(原告らの主張)
(一) 本件アーチ設置工事関係
(1) 被告武田は、本件アーチ設置工事に関する財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有し、かつ自ら決裁した者であり、四号前段に規定する「当該職員」として損害賠償義務がある。
(2) 被告小林、花木、浅野、柴田は、被告武田を補助して違法な財務会計上の行為を行わせた者であり、清洲町は右被告小林らに対し損害賠償請求権を有するので、四号後段に規定する「怠る事実に係る相手方」として損害賠償義務がある。
(3) 被告六合建設は実体のない無効な本件アーチ設置追加工事請負契約を締結し、代金の支払を受けたものであり、清洲町に対し右違法支出相当額の損害賠償義務ないしは不当利得返還義務がある。
(二) 回数券関係
(1) 被告浅野は回数券の管理責任者であり、被告武田は右財務会計上の行為を行う権限を地方自治法上本来的に有する者であり、いずれも四号前段に規定する「当該職員」として損害賠償義務がある。
(2) 被告浅野、武田は清洲町に利用料収入一〇八万三二〇〇円相当の損害を与えたものである。
(三) 映写機関係
(1) 被告花木は、清洲町決裁規程により映写機購入、「取付」工事に関する財務会計上の行為の専決を任され、被告武田は右財務会計上の行為を行う権限を地方自治法上本来的に有する者であり、いずれも四号前段に規定する「当該職員」として損害賠償義務がある。
(2) 被告小林、浅野、前田は、被告花木、武田を補助して違法な財務会計上の行為を行わせた者であり、清洲町は被告小林らに対し損害賠償請求権を有するので、四号後段に規定する「怠る事実に係る相手方」として損害賠償義務がある。
(3) 被告中部松下は、実体のない無効な本件映写機追加契約代金の支払を受けたものであり、右代金相当額の損害賠償ないし不当利得返還義務がある。
(被告らの主張)
争う。
第三当裁判所の判断
一 監査請求の適法性(監査請求期間)について
1 前記争いのない事実等記載のとおり、本件アーチ設置追加工事について、支出負担行為は平成九年二月一七日、支出命令は同年四月三日にそれぞれなされているところ、これに対する原告らの監査請求は平成一〇年六月一〇日になされており、本件映写機取付工事に関する支出について、支出負担行為は平成九年三月三日、支出命令は同年四月二八日にそれぞれなされているところ、これに対する監査請求は、平成一〇年七月六日に行われており、いずれも当該行為のあった日から一年を経過した後に監査請求がされているから、右監査請求が適法であるというためには、法二四二条二項ただし書の「正当な理由」が必要である。
2 なお、被告小林ら「当該職員」でないとする者に対し、損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であると主張する請求については、監査請求が、当該地方公共団体の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときに該当するから、当該監査請求については、右怠る事実に係る請求権の発生原因である当該行為のあった日又は終わった日を基準として法二四二条二項の規定を適用すべきであるから(最高裁昭和六二年二月二〇日第二小法廷判決民集四一巻一号一二二頁)、1の判断が必要である。
3 法二四二条二項ただし書にいう「正当な理由」とは、<1>当該行為が秘密裡にされた場合であって、<2>普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、<3>当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和六三年四月二二日第二小法廷判決集民一五四号五七頁)。
そして、<1>当該行為が「秘密裡」にされた場合とは、当該財務会計行為が予算や決算として当該地方公共団体の議会で審議、議決されたような場合においては、当該行為の存在自体や当該行為の違法性がことさら隠ぺいされていた場合などの特段の事情がない限り、含まれないものと解される。原告らは、秘密裡にされたのと同様に客観的に知り得ず、知ることが困難であった場合も含む趣旨であると主張するが、独自の見解であって採用できない。また、<2>について、原告らは、「当該行為を知ることができた」とは、当該行為の存在のみならず、当該行為が違法、不当であることを基礎付ける事実を知り得たことをいうと主張するが、これも同様に独自の見解であって採用できない。
4 本件アーチ設置追加工事
(一) 前記争いのない事実及び証拠(甲三、丙六、七と八の各一、二)並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。
(1) 本工事について、平成八年度当初予算において議会審議がされている。本件アーチ設置工事の予算科目は、七款一項一目一五節工事請負費であるが、平成八年三月提出に係る清洲町の平成八年度一般会計予算書(丙六)の該当欄には、「一四〇〇万円」説明欄に「観光啓発アーチ設置工事」とあり、平成八年四月の清洲町の広報(甲一七)にも、平成八年度の予算編成における歳出の部中、「商工」の欄に「商工費の主なものは、観光PRアーチの設置工事費など。」として、内訳が記載されている。
(2) 清洲町においては、「清洲町指名競争入札結果の公表に関する取扱い規程」(昭和五七年訓令第二号。甲一八)により、入札に係る設計若しくは仕様書の金額が一〇〇万円を超えるものについては、指名競争入札の結果を公表することとされている。
(3) 平成九年九月九日、本件アーチ設置工事全体について、平成八年度決算書が議会に提出された(丙九の一と二)。右決算書には、歳出の款「7 商工費」項「(1) 商工費」目「1商工観光総務費」節15として「工事請負費 三六〇〇万円」、備考欄に「観光啓発アーチ設置工事一三八〇万八一八〇円」(右金額は、本工事と追加工事の請負代金の合計額と一致する。)との記載がある。
(二) 以上によれば、本件財務会計行為である追加工事は、予算及び決算で議会に公表されていたものであり、かつ、被告らにおいてことさら隠ぺいしたことを認めることはできないから、「秘密裡」であるものとはいえない。
原告らは、被告らが、本件アーチ設置工事に関する支出を、本工事契約と随意契約が可能な追加工事契約に分け、追加工事契約の存在自体を隠したと主張するが、発注者と施工者との間で、工事の進め方について具体的に検討する過程で、工事内容の追加、変更が生ずることは、往々にしてあるところであり、そのような場合には、工事内容の変更として追加工事契約を締結することもやむをえないのであるが、本工事に含まれていない既設水道管布設替工事を行っていることは原告らも認めており(甲九)、原告らの主張するように本件において、ことさら本工事と追加工事に分けて追加工事を隠ぺいしたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
また、原告らは、本件アーチ設置工事に関する支出が違法、不当であることを基礎付ける事実が予算、決算の議会審議にも、町会報にも表われないと主張するが、このような事実まで、予算や決算において明らかにするようにされていないため、表われていないにすぎず、これをもって被告らに隠ぺいの意図があるということはできない。
(三) 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、平成一〇年六月一〇日にされた監査請求は、監査請求期間を経過したことにつき正当な理由があったとは認められない。
5 映写機関係
(一) 前記争いのない事実及び証拠(甲三)並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。
(1) 甲一二の一によれば映写機「取付工事」の予算科目は五款一項二目一五節工事請負費である。
(2) 平成六年三月、平成六年度一般会計当初予算が提出された。右予算書(丙四)の歳出の第五款一項二目には一五節工事請負費の節しかなく、しかも「二七億六〇〇〇万円、施設等建設工事(平成六年度工事分)」との記載があるだけである。
(3) 清洲町が住民に配布している「広報きよす」平成七年三月号には、「同年四月のアルコ清洲のオープンに先立ち同年三月二六、二七日の両日に施設の一般公開をする」旨の記事が掲載されており、住民らに対し、右施設内容を公開することが周知されている。
(4) また、映写機購入の事実及びその台数については、平成八年度一般会計歳入歳出決算書(丙九の二)の「財産に関する調書」の「勤労福祉会館」の欄に映写機三台を購入したことが明記されている。
(二) 以上によれば、本件財務会計行為である映写機請負工事は、予算及び決算で議会に公表されていたものであり、かつ、被告らにおいてことさら隠ぺいしたことを認めることはできないから、「秘密裡」であるものとはいえない。
なお、支出金調書では一五節工事請負費であるのに、決算では、一八節備品購入費として計上されているので、ことさら隠したのではないかとも疑われるが、主たる支出は映写機本体の売買価格であるものの、「備品購入費」の予算枠が不足することから、従たる支出である「取付調整費」に着目し、この費目に基づく「工事請負費」として支出したのであり、「款」「項」以降の細目である「節」については市町村長限りにおいて流用ができることとされていること(法二二〇条二項)を考えると、この事実をもってことさら隠したとまでは認められない。
原告らは、購入した映写機が取付工事を要しない機種であるのに、被告らが作為的に備品購入費と取付工事費を分けて行ったと主張するが、そのような事実を認めるに足る証拠はない。
(三) 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、平成一〇年七月六日にされた監査請求は、監査請求期間を経過したことにつき正当な理由があったとは認められない。なお、秘密裡の点をおいたとしても、原告らとしては、遅くとも施設の公開がなされた平成七年三月二七日には、本件備品の状況を知ることが十分可能であったのであり、原告らの監査請求は三年四月を経過してなされたのであって、「正当な理由」は認められない。
二 回数券関係の訴えの被告適格
回数券という財産の管理について、本来的に管理権限を有するのは、町長である被告武田である。
原告らは、総務部長であった被告浅野も「当該職員」に該当すると主張するが、被告武田が被告浅野に右権限を委任したことあるいは専決権を与えた旨の決裁規程等もないから、被告浅野は「当該職員」に該当しない。
よって、回数券に関する訴えのうち、被告浅野は被告適格を有しないから同人に対する訴えは不適法である。
三 本件回数券についての管理の違法性
1 「清洲町勤労福祉会館の設置及び管理に関する条例」(丙一三の一と二)によると、「アルコ清洲を利用しようとする者は、あらかじめ町長の許可を受けなければならず、温水プールを利用しようとする者は、規則で定める利用券の交付をもって利用の許可を受けたものとする。」(四条一項)とされ、「利用者は、別表第一から第三に掲げる使用料を許可と同時に納付しなければならない。」(六条一項)とされていた。そして、温水プールの使用料については別表第一に規定されており、大人の個人利用で一回券四〇〇円、一五回券四〇〇〇円とされているほか、特別割引として、「町長が特に認めた場合で、法人・企業・団体等が相当数一括購入した場合に限る。大人用個人サービスカードで、一回分一五〇円とする。」と定められている(丙一三の一)。清洲町は、企業等に対し、特別割引カードを、作成費一〇〇円を加えて一六〇〇円で販売していた(被告浅野本人)。
右条例の定めからすると、回数券は、無記名債権であって、動産であるから(民法八六条三項)、法二三七条一項の「物品」に該当するが、物品は、条例又は議会の議決による場合でなければ、適正な対価なく譲渡することができないものであり(同条二項)、「清洲町財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例(丙一二)」六条は、物品について、「公益上の必要に基づき、他の地方公共団体その他公共団体または私人に譲渡するとき(一号)」は無償で譲渡することができるとしているから、清洲町が、回数券を右条例に基づいて譲渡したと認められるものであれば、右無償譲渡は適法であるが、譲渡自体が認められないもの、あるいは、譲渡自体は認められるが右条例に基づかないと認められるものについては、違法に財産の管理を怠ったものと評価できる(後者の場合、財務会計行為として、右譲渡行為自体を捉えることが可能であるが、これを別の観点から、財産管理を怠ったと捉えることが否定されるものではないものと解する。)。
2 証拠(乙ロ一ないし四、被告浅野本人)及び弁論の全趣旨によれば、回数券に関し、次の各事実を認めることができる。
(一) 各種回数券の管理は、総務課の職員が行っており、特に担当者が特定していたわけではなかった。回数券は、アルコ清洲ではなく、清洲町役場二階の会議室のカウンター内に保管されていた。右会議室は常に鍵が掛かっており、鍵は町長と総務課職員が持っていた。回数券について、年度末などに在庫確認を行うことはなかった。
(二) 商工会を通じて販売する場合には口座振込により、企業に販売する場合には清洲町が用意した三連の納付書により納付することとし、収入役室が収入金調書を作成していたので、販売された分については数量及び金額が把握されていた。
被告らが主張する無償譲渡は、町長の判断により行われ、その都度、必要枚数が、町長自ら若しくは総務課職員によって、保管場所から持ち出されていた。
(三) 回数券が販売あるいは無償譲渡されて、保管場所から持ち出される場合に記帳すべき台帳はなかった。それに代わるものとして、丙一〇の「10回券(特別割引カード)」という題名の、綴じられていない、半けい紙二枚に手書きで、年月日、枚数、用途を記載した手控えがある。記載は、総務課職員が行っていたが、記載者の署名、捺印はない。右手控えは、記載漏れもあり、丙一〇によると平成九年四月二五日現在の残数は四一九一枚となるはずである。
3 別表(不明分六七七枚の使途)のうち、「丙10」欄が「○」のものは、丙一〇の手控えに記載のあるものであり、その余は、被告浅野及び被告武田の記憶に基づいて作成されたものである。
そこで、別表につき、順次、無償譲渡の事実の有無、無償譲渡の適法性について、検討する。
(一) 「総務課公用」について(16、19、21、24)
被告浅野本人は、本人尋問及び陳述書(乙ロ三)において、16、19、21は、他の地方公共団体に譲渡したものであり、他庁の会議に出席した際にPRとして渡すとか、他庁の首長が来庁した際に渡したものであると供述し、24は、アルコ清洲が県の補助金や地方債を受けて建設されたことから、竣工式前後に県庁、労働福祉課、尾張事務所行政課に挨拶に行った際、三箇所にそれぞれおよそ一〇枚ずつPRとして配布したもの及び被告武田が県の副会長、尾張連絡協議会の会長、郡の町村会長の三職を兼ねていたことから、他庁の首長と会う機会が多く、その際にPRのために複数回にわたり無償譲渡したものである、職員が関わらず、被告武田自らが譲渡したと供述する。
しかし、以上の説明以上には、譲渡時期、譲渡先を明らかにはできず、その裏付け証拠も提出できない。結局、どのような「公用」で誰に譲渡したのかも特定できず、その具体的な使途が不明であるというほかなく、公益上の必要性があったものとは認められない。
(二) 「新成人と語る会」参加者への記念品について(12、18、23)
証拠(乙ロ三、被告浅野本人)によると、新成人と語る会は、清洲町が主催して、町長と成人式を迎える者の代表一二名が座談会を行うもので、平成七年度は平成七年一二月二三日(丙一一の九)、平成八年度は平成八年一二月二一日(丙一一の一四)に実施されたこと、この出席者に対して、清洲町は一〇回券を記念品として渡していることが認められる。
原告らは、新成人と語る会の参加者に対しては五回券が記念品として渡されたと主張するが、原告らが五回券が配られたと主張する者は、平成八年と平成九年の成人式の出席者であり、新成人と語る会の参加者ではなく、前記認定を左右するものではない。また、証拠(甲三〇、三二の一ないし三)によると、平成九年一二月二三日(丙一一の一七)に実施された新成人と語る会に参加した者には、回数券を記念品として渡していないと認められるが(被告浅野本人は渡したというがその部分については信用できない。)、同年は清洲町長が被告武田から大長芳雄に替わっていることから、右事実は平成七年及び平成八年に記念品として渡されたとの前記認定を左右するものではない。
(三) 職員への配布(8)
証拠(乙ロ三、丙一一の七、被告浅野本人)によると、平成七年六月二八日に清洲町職員(一般行政職及び嘱託職員合計一八八名)に対し、アルコ清洲の竣工等への慰労とともに、町民にPRするための材料として一枚ずつの合計一八八枚を無償譲渡したことが認められる。職員に対する配布が、単なる慰労であれば公益上の必要があるとはいえないが、職員がアルコ清洲を体験することにより、他の人に宣伝するというPR効果を期待してのものであれば、「公益上の必要」がないとはいえない。
(四) アルコ清洲及び清洲城入館記念品(5、9、11、13、15、17、20、22)
アルコ清洲及び清洲城入館記念品として、回数券が配布された事実については、その一部(5、13、20、22)について手控えに記載がないものの、その他の場合(9、11、15、17)には記載されていることからすると、単なる記入漏れに過ぎないものと解される。そして、このように町の施設の入場者が一定人数に達成した場合に、PRの一環として記念品を譲渡することは、公益上の必要がないとはいえない。
(五) その他
マスコミやアルコ清洲使用者等にPRとして譲渡するもの(1、3、4、6、7、10)も、公益上の必要がないとはいえない。
被告浅野本人は、2(平成七年三月三一日の二〇枚)については、企業に一〇回券購入依頼の見本及びアルコ清洲への備品寄附のお礼とPRとして無償譲渡したものであり、14(平成八年六月一二日の四九枚)は、県文連東尾張芸能大会打ち合わせ出席者にPRのため無償譲渡したものである(丙一一の一一)と供述し、陳述書(乙ロ三)にも同旨の記載がある。
しかし、右供述を裏付ける証拠は乏しく、手控えに記載がない理由も不明である。結局、2と14については、誰にどのような目的で譲渡したのかが明らかでなく、公益上の必要があったことの証明がないというほかない。
以上をまとめると、総務課公用の16(一〇枚)、19(一〇枚)、21(五枚)、24(四七枚)、PR用の2(二〇枚)と14(四九枚)の合計一四一枚については、条例に基づかないで譲渡されたり、不明となっているものであり、財産の管理の違法が認められる。そして、右回数券は一枚当たり一六〇〇円で販売されていたから、合計二二万五六〇〇円の販売収入が得られなかったことに帰し、清洲町に同額の損害を被らせたことになる。
四 被告らに責任があるか。
被告武田は、財産の本来的管理者として、条例に基づき譲渡したり、不明とならないようにすべき義務を負うところ、少なくとも過失により回数券一四一枚分を減少させたものであるから、回数券一四一枚分合計二二万五六〇〇円の損害を清洲町に生じさせたもので、損害賠償の責任を負う。
五 結論
以上のとおり、本件訴えのうち、(一)本件アーチ設置追加工事に関する請求、(二)映写機請負工事に関する請求、(三)回数券に関する請求のうち被告浅野に対する請求、以上の請求に係る部分は、いずれも不適法であるから却下することとし、回数券に関する請求のうち、被告武田に対する請求は二二万五六〇〇円及びこれに対する不法行為の後で訴状送達の日の翌日である平成一〇年八月八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり、被告武田に対するその余の請求は理由がないから棄却することとする(なお、仮執行宣言は相当でないので付さないこととする)。
(裁判長裁判官 野田武明 裁判官佐藤哲治、同達野ゆきは、いずれも転勤につき署名押印できない。裁判長裁判官 野田武明)
別表(不明分677枚の使途)<省略>